精度の高いCNC加工案件を成功させるには、設計意図から最終製品の完成までを、段階ごとに明確化したワークフローが不可欠です。CADデータの受領から出荷に至るまで、各プロセスが連携することで、完成部品の精度・機能・信頼性が確保されます。
本記事では、カスタムCNC加工サービスの一連のワークフローを整理し、エンジニア・バイヤー・プロジェクトマネージャーがプロセスを標準化・効率化し、安定した結果を得られるようにすることを目的としています。
最初のステップは、お客様から2D図面(通常PDF形式)と3D CADデータ(.STEP / .IGES)が提出されるところから始まります。これらのデータは、形状の複雑さ、公差指定、技術的な実現性などの観点でレビューされます。主な確認項目には、部品の対称性、加工性、肉厚の妥当性などが含まれます。
熟練エンジニアによるDFMレビューにより、アンダーカット、過度に薄い箇所、必要以上に厳しい公差など、加工上のリスク要因を洗い出します。特に少量生産案件では、加工時間・コスト・不良率を最小化できるよう、形状や公差の見直しを提案します。
アルミ7075やインコネル625などの材料種類、要求される表面処理、数量、加工難易度に基づき、詳細な見積が作成されます。見積には、コスト内訳、想定リードタイム、出荷条件(インコタームズなど)が含まれます。
受注確定後は、プログラミング工程に進みます。CAMエンジニアが最適な切削戦略を組み立て、アイドル時間・工具交換・ワーク振動を最小限に抑えるツールパスを生成します。複雑な3D曲面を持つ部品では、精度と表面粗さを向上させるために多軸加工が適用されることもあります。
要求スペックを満たす認証済みの素材を調達し、機械的特性などを確認したうえで受入検査を行います。その後、素材を荒寸法に切断し、トレーサビリティを確保するためにジョブ番号やロット情報でラベリングします。
部品は、形状と仕様に応じてCNCフライス加工、CNC旋削、放電加工(EDM)、研削加工などの設備で順次加工されます。各工程は、段取り指示書と工程内検査チェックシートに基づいて実行され、仕様への適合性をその都度確認します。
加工完了後、部品はマイクロメータ、ノギス、CMM(三次元測定機)などを用いて寸法検査を行います。航空宇宙・医療・原子力といった分野の案件では、初品検査(FAI)レポートやフルトレーサビリティドキュメントの提出が求められることも多く、これらもこの段階で作成されます。
仕様で要求されている場合、部品は仕上げ工程に進みます。ここでは、アルマイト処理、熱スプレーコーティング、PVDコーティング、電解研磨などのオプションが適用されます。各処理は、外観・耐食性・耐摩耗性など、顧客が求める機能・美観要件を満たすよう管理されます。
案件によっては、簡易な機械組立やサブコンポーネントの組み込みが必要となる場合があります。組立完了後、最終検査により、寸法・外観・機能のすべてが仕様書どおりであることを確認してから、出荷可否を判断します。
完成品は洗浄され、防錆対策を施したうえで梱包されます。その際、輸送中のダメージや腐食を防ぐための養生材や梱包仕様は、顧客の出荷指示に従って設定されます。国内配送または国際物流サービスにより出荷され、必要に応じて追跡番号などのリアルタイムトラッキング情報が提供されます。
CADデータの提出から最終納品までのCNC加工ワークフローを理解しておくことで、関係者はコミュニケーションを最適化し、品質を安定させ、リードタイムを短縮しやすくなります。体系化された生産プロセスを構築することは、各カスタムCNC部品が、機能要件・規格要件・コスト目標をバランス良く満たすうえで重要な鍵となります。