複雑で完全に内部が閉じた構造を持つ部品に対しては、レーザー三角測量や構造化光スキャンなどの従来の光学式3Dスキャン技術は適していません。これらの技術は、スキャナのカメラやプロジェクタから直接見える外部表面形状を取得する仕組みで動作します。したがって、固体材料を透過して内部のチャンネル、空隙、またはアンダーカットを捉えることはできません。このため、精密加工サービスや多軸加工サービスによって製造された部品の外形寸法や表面輪郭の検査には理想的ですが、内部構造の検査には効果がありません。
内部および外部形状を非破壊的に取得するための決定的な技術が、産業用X線コンピュータ断層撮影(CT)スキャンです。この方法は医療用CTスキャナと同じ原理で動作しますが、工業計測用途に特化しており、はるかに高い解像度と精度を提供します。
仕組み: 部品はX線源と検出器の間にある回転ステージ上に配置されます。部品が回転する間に、数百から数千枚の2D X線画像(ラジオグラフ)が取得されます。強力なソフトウェアがこれらの画像を再構築し、正確な3Dボリュームモデル(「ボクセルデータセット」とも呼ばれる)を生成します。
主な機能: CTスキャンにより以下のような情報を明らかにできます:
内部通路や冷却チャンネル。
鋳造品や積層造形部品内の気孔や空隙。
複雑な射出金型の正確な形状および肉厚。
分解せずに実施するアセンブリ解析。
部品を切断せずに内部を「視る」能力は、複数の産業や工程において革新的です。
複雑部品の初品検査: CTスキャンは、CNC試作加工によって製造された初回部品の内部形状を検証するために不可欠です。例えば、複雑な内部流路を持つ燃料インジェクタや医療用マニホールドなどの部品がCADモデルと完全に一致しているかを確認します。
積層造形の検証: CTスキャンは、3Dプリントで製造された部品の内部完全性を検証するためのゴールドスタンダードです。外部スキャナでは検出できない内部の空洞・未融合・気孔を特定できます。
破損解析およびリバースエンジニアリング: CT技術を用いることで、破損した内部リブや閉塞した流路などの内部欠陥を破壊検査なしで調査できます。また、CADデータが存在しない内部形状のリバースエンジニアリングも可能です。
鋳造プロセスの管理: ラピッドモールディングで製造された部品では、CTスキャンにより内部収縮やガスポロシティを迅速に特定し、成形プロセスを即座に修正できます。
多くの品質管理ワークフローでは、光学スキャンとCTスキャンを組み合わせることで、包括的なデジタル記録を作成します。
CTスキャン: 内部および外部の全形状を取得します。
高解像度光学スキャン: (青色光やレーザーを使用)外部表面の微細な質感や色を取得したり、CTで表面精度が不足する箇所を検査します。
このハイブリッドアプローチは、航空宇宙産業や医療機器など、高価値部品の完全な検証において極めて重要です。
結論として、従来の3Dスキャンが外部表面に限定されるのに対し、産業用CTスキャンは複雑な内部構造を持つ部品に最適であり、極めて効果的です。非破壊的かつ高精度に、部品内部の複雑な構造を検査・解析・リバースエンジニアリングすることが可能です。