チタン加工において、工具メーカーを切り替える際の加工パラメータ調整は、極めて重要かつ体系的なプロセスです。公称仕様が似ている工具であっても、同じ性能を示すとは限りません。調整は、新しい工具の幾何形状、母材、コーティングの特性を、既存の基準工具と比較・評価することに基づいて行われます。
変更を行う前に、現在使用している実績ある工具の詳細な基準データを確立しておく必要があります。これには、速度(SFM)や送り(IPT)だけでなく、工具寿命(分または加工個数)、切りくずの色と形状、表面仕上げ状態、そして主な摩耗モード(例:フランク摩耗、欠け、溶着など)を含めます。この基準はすべての比較の基点となり、当社の精密加工サービスにおける標準的な実践です。
新しい工具ブランドを導入する際には、基準工具と比較して以下の主要な特性を分析します:
コーティング: 標準的なAlTiNか、より高度なnACoまたはAlTiSiNか?熱安定性の高いコーティングであれば、切削速度(SFM)を5〜15%増加させることが可能です。
刃先処理: 鋭利(高ポジティブ)か、または堅牢(ホーニングやネガティブ)か?鋭利な刃は切削力を低減し、送りを高めることができますが、耐久性が低下するため速度をやや下げる必要があります。
母材の靱性: メーカーが靱性を重視しているか、耐摩耗性を強調しているか?靱性の高いグレードは断続切削に適し、同じ条件を維持できますが、硬度・耐摩耗性に優れるグレードは安定加工条件下でより高い速度を許容します。
安全なアプローチとして、まずは保守的に開始し、パラメータを一度に1つだけ変更します。最初は基準SFMを15〜20%減らし、同じ1刃あたり送り(IPT)を維持するのが安全です。
初期テストの実施: 短時間(例:5〜10分)または設定した個数の部品を加工します。
観察と分析:
工具摩耗が基準より遅い場合: 新しい工具は耐摩耗性が高い可能性があります。SFMを5%ずつ段階的に上げ、基準の工具寿命と同等またはそれ以上の最適値を探します。
欠けや微小割れが見られる場合: 刃先がやや脆い可能性があります。SFMをさらに5〜10%下げるか、送りをわずかに減らします。CNCフライス加工サービスでは、最大限の剛性を確保してこの問題を抑制します。
切りくずが長く絡まる場合: 工具形状がせん断効果を十分発揮していない可能性があります。送りを5〜10%増やし、切りくずを厚くして分断しやすくします。
切りくずが青く変色する場合: 熱が過剰に発生しています。SFMを直ちに下げます。
この実証的なアプローチは、当社のチタンCNC加工サービスで信頼性の高いプロセスを構築するための基本です。
信頼できる工具メーカーは、詳細な適用ガイドやアプリケーションエンジニアを有しています。これらを積極的に活用しましょう。基準データと、加工している特定のチタン合金(例:Ti-6Al-4V)を提供することで、最適な初期パラメータを提案してもらえます。これによりテスト時間と材料ロスを大幅に削減できます。
目的は単に従来のパラメータを再現することではなく、1個あたりのコストで従来の性能を上回ることです。20%高速に加工できても、工具寿命が50%短い場合は改善とは言えません。新しいブランドの最適パラメータ、工具寿命、製品品質を記録し、自社独自のデータベースを構築することで、将来の生産において一貫した結果を確保します。