最適なステンレス鋼グレードの選定は、耐食性、機械的特性、加工性、そして総コストのバランスを取る重要なエンジニアリング判断です。「最高の」グレードは普遍的に存在するわけではなく、正しい選択は、特定の用途における使用環境、機械的負荷要件、そして適用される規格によって決まります。基本的な分類として、ステンレス鋼は主に5つの系統(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、二相系(デュプレックス)、析出硬化系)に分けられます。選定プロセスでは、以下の主要パラメータを体系的に評価することが重要です。
ステンレス鋼を選択する主な理由はその耐食性にありますが、その性能はグレードによって大きく異なります。まず、使用環境を正確に特定する必要があります。
穏やかな環境(大気中): 室内や乾燥環境など、最小限の腐食リスクしかない用途では、SUS430(フェライト系)などの基本グレードで十分です。
一般的な腐食(水、軽度の化学物質): オーステナイト系グレード、たとえばSUS304は、幅広い環境で優れた耐食性を発揮し、最も一般的に使用されています。
塩化物環境(海洋、化学プラント): 塩化物は孔食や隙間腐食を引き起こすため、モリブデン含有量の高いグレード、例えばSUS316やスーパーオーステナイト系およびデュプレックス系(SUS2205など)へのアップグレードが必要です。
応力腐食割れ(SCC): 高温の塩化物環境下で引張応力がかかる場合、標準的な304などのオーステナイト系はSCCに弱いため、デュプレックス鋼または高ニッケル合金が推奨されます。
要求される強度、硬度、靱性は、選択肢を大きく絞り込みます。
高強度・高硬度: 切削工具、ベアリング、バルブなど耐摩耗性と硬度が求められる用途では、マルテンサイト系のSUS420が理想的です。熱処理によって高強度が得られます。
高靱性・高延性: SUS303および304などのオーステナイト系は、極低温でも良好な衝撃耐性を維持します。
高い比強度(強度対重量比): 航空宇宙や高性能自動車用途には、析出硬化系(PH)鋼のSUS630(17-4PH)が最適です。熱処理により、標準オーステナイト系をはるかに超える強度を発揮します。
部品の製造方法は、グレード選定における決定的な要因となります。
CNC加工: 先述のように、SUS303は最も加工しやすい材料です。耐食性と加工性のバランスを取るにはSUS304が適しており、腐食環境下ではSUS316が必要です。
溶接: 一般にオーステナイト系(304、316)は溶接性が最も良好です。フェライト系およびマルテンサイト系は、熱影響部(HAZ)で粒成長や硬化が生じやすいため注意が必要です。
成形: オーステナイト系鋼は高い延性を有し、深絞りや過酷な成形工程に最適です。
高温環境(酸化耐性): SUS310のように高クロム含有のグレードは、炉部品や熱交換器などの高温用途向けに設計されています。
極低温用途: 304および316などのオーステナイト系は低温でも靱性を保持し、LNGや極低温機器の標準材料です。
業界ごとに特定のグレードが求められる場合があります。
医療・食品産業: 優れた洗浄性と耐食性が必須です。SUS304およびSUS316が一般的です。さらに、電解研磨や不動態化処理による滑らかな表面仕上げが重要です。
海洋・オフショア産業: 塩水による孔食への耐性が求められます。SUS316、デュプレックス鋼、および高合金グレードが必須です。
航空宇宙・防衛産業: 17-4PH(SUS630)などの高強度析出硬化鋼が構造部品に広く使用されます。
まず最も重要な要件(多くの場合は耐食性)を明確に定義し、その上で機械的特性、加工性、コスト制約を重ね合わせます。重要な用途の場合は、選定したグレードを実際の使用環境で試作・検証することが推奨されます。経験豊富なメーカーであるNewayと提携し、CNC試作加工を行うことで、このプロセスのリスクを軽減し、選定した材料がその寿命全体で確実に性能を発揮することを保証します。