製造およびエンジニアリングの観点から見ると、最適なアディティブ・マニュファクチャリング技術を選定するには、精度、機械的強度、そして用途(機能)それぞれのトレードオフを正しく理解することが不可欠です。SLA(ステレオリソグラフィ)、SLS(選択的レーザー焼結)、FDM(熱溶解積層)は原理が大きく異なるため、最終的に得られる部品の特性も大きく変わります。最適な選択肢は常に一つに決まるわけではなく、高精細な外観モデルなのか、エンジンルーム内で使用される機能部品なのか、あるいは高い剛性をもつ治具・固定具なのかといった「部品の用途」によって決まります。
SLA(ステレオリソグラフィ): SLAは一般的に、この3方式の中で最も高い寸法精度と優れた表面仕上げを実現できます。液体フォトポリマーレジンをレーザーで一層ずつ正確に硬化させていく方式のため、25〜100ミクロン程度の非常に細かい形状解像度と、非常になめらかな表面を得ることができます。そのため、タイトな公差と外観品質が求められる部品のSLA 3Dプリンティングに最適であり、精密なプロトタイプ、ラピッドモールディング用マスターパターン、複雑なビジュアルモデルなどに広く用いられます。
SLS(選択的レーザー焼結): SLSは良好な精度を持ちますが、一般的にはSLAほどの高精度ではありません。レーザーで粉末状のポリマー(代表的にはナイロンPA12)を焼結し、周囲の未焼結粉末が造形中の部品を自然に支持するため、非常に複雑な形状でもサポートなしで造形できます。ただし、粉末粒子由来の影響で、表面はややザラついたマットな仕上がりになる傾向があります。SLS 3Dプリント部品は、サポートフリーで複雑な形状を造形できる利点を活かし、機能試作や複雑なアセンブリ部品に非常に適しています。
FDM(熱溶解積層): FDMは微細形状の再現性という点では、3方式の中で最も精度が劣る場合が多いです。熱で溶かした熱可塑性フィラメントをノズルから押し出し、層ごとに積み上げていく方式のため、層間接着やノズル径が最小形状サイズを制限し、曲面では「段差(ステアステッピング)」が目立ちやすくなります。FDM 3Dプリンティングソリューションは入手性とコスト面で優れていますが、精度はプリンタのキャリブレーション、ノズル径、積層ピッチ設定に大きく左右されます。
SLS(選択的レーザー焼結): SLSは、機能部品向けとして最も強度と耐久性に優れた部品を製造できる技術です。焼結された粉末からなる部品は高い密度を持ち、ほぼ等方的な機械特性を示します。これは、部品全体が溶融・焼結した粉末で構成されているため、方向による強度差が小さいからです。ナイロンPA12のような材料は、優れた靭性、疲労耐性、適度な耐薬品性を備えており、3Dプリンティングの中でもSLSは、自動車や産業機器分野におけるエンドユース部品や高要求の機能試作、ハウジング用途に適した選択肢となります。
FDM(熱溶解積層): FDM部品の強度は非常に異方性が強いのが特徴です。造形層の平面方向(X-Y面)では最も強くなりますが、層間(Z方向)では剥離(デラミネーション)が起こりやすく、強度が大きく低下します。ABS、PC(ポリカーボネート)、ナイロン(PA)などのエンジニアリンググレード熱可塑性樹脂も利用可能ですが、層状構造であることによる構造的な弱点は残ります。そのためFDMは、荷重方向を設計段階でコントロールできる簡易機能試作、治具・固定具、または強度要求が限定的な部品に適しています。
SLA(ステレオリソグラフィ): SLA樹脂はフォトポリマーであり、硬化後はSLSナイロンやFDM熱可塑性樹脂と比べて脆くなりやすい傾向があります。機械的ストレスや長期的なUV光・湿気への曝露によって、ひび割れを起こすこともあります。「タフ」や「高耐久」といった、ABSやPPに近い特性を謳うレジンも存在しますが、長期の疲労特性や靭性という点では、真の熱可塑性樹脂にまだ及ばないのが一般的です。SLA部品は、形状・嵌合確認(フォーム&フィット)や外観試作には非常に優れていますが、高い負荷がかかる機能試験用途にはあまり向いていません。
高精細プロトタイプにはSLA: 主な要求が寸法精度、微細形状、滑らかな表面仕上げであり、ビジュアルモデル、プレゼン用モデル、またはフォーム&フィット確認のための試作が目的であれば、SLAを選択します。
機能性・複雑形状部品にはSLS: 強度と耐久性があり、等方的な特性を持つ部品が必要で、機能試験やスナップフィット、サポートなしで複雑な中空・内蔵形状を造形したい場合にはSLSが最適です。
コスト重視・大形部品にはFDM: 低ボリュームの大形部品や、方向性のある強度で許容できるシンプルな機能試作、あるいは概念モデルの迅速かつ低コストなプロトタイピングにはFDMが適しています。
ハイブリッド製造も検討する: 最終的な性能と信頼性を重視する場合、初期段階では3Dプリントでプロトタイプを作成し、最終量産品はCNC加工に移行して優れた材料特性と保証された精度を得る、という選択肢があります。また、製造工程で使用する専用治具や固定具を3Dプリンティングで製作し、本番部品は他の工法で製造するハイブリッドな運用も効果的です。