プラスチックの加工パラメータを迅速に見積もるには、スピードと工学的原則のバランスを取った体系的な段階的アプローチが必要です。金属とは異なり、プラスチックは熱伝導率が低く、柔らかく、摩耗性や粘着性を持つため、適切なパラメータ設定が溶融、欠け、または表面粗さの悪化を防ぐうえで極めて重要です。効果的な手法は、基準値の算出から始め、材料特性に応じた補正を行い、最終的に実際の結果と工具選定に基づいて微調整を加えることです。
迅速な初期見積もりを行う場合は、標準的な超硬エンドミル(例:直径6mm、2枚刃)を基準としてスケーリングします。重要な原則は、高い切削速度(SFM)と高い送り量(FPT)を維持し、発生する熱を部品ではなく切りくずに逃がすことです。
主軸回転数(RPM): 剛性の高いプラスチック(ポリカーボネート(PC)、ABSなど)ではSFM 500〜1000、柔らかいプラスチック(PEEK、ナイロンなど)ではSFM 200〜500を基準にします。計算式:RPM = (SFM × 3.82) ÷ 工具径(インチ)
送り速度(IPM): 仕上げ加工ではFPT 0.001〜0.004インチ、荒加工では0.005〜0.015インチを目安とします。計算式:IPM = RPM × 刃数 × FPT
切込み量(DOC): 6mm工具の場合、軸方向切込み(Axial DOC)は工具径の1〜2倍、径方向切込み(Radial DOC)は仕上げで工具径の10〜50%、荒加工では最大75%を目安とします。
ここでは、プラスチックの挙動に応じて基準値を迅速に修正します。材料をカテゴリ化し、次の補正を適用します。
硬質/ガラス充填材(例:PC、ABS、アクリル): 基準値より高いRPMを使用。脆性があるため、高いFPTで材料をクリーンに破断させます。出口部での欠けに注意。
柔らかく粘りのある材料(例:ナイロン、HDPE、PP): 鋭利で高研磨の工具を使用し、高いポジティブレーキ角を確保。RPMを下げて発熱を抑え、FPTを増やして厚めの切りくずで熱を逃がします。再溶融や工具への付着が発生しやすいので注意。
研磨性・複合材(例:PEEK、PI、ガラス充填グレード): ダイヤモンドコートまたは超硬工具を使用。中〜高RPMを設定し、工具摩耗を前提にパラメータを設定。材料除去率と工具寿命のバランスを取ることが重要です。
高機能熱可塑性樹脂(例:ULTEM/PEI): 硬質材料に類似するが、熱的・構造的特性に合わせてパラメータを微調整します。
正しい工具の選定は効率的な加工に不可欠です。適切なカッターなしでは、どんなパラメータも意味を成しません。
工具タイプ: 常に鋭利な無コートまたは研磨超硬エンドミルを使用。プラスチックには2〜3枚刃の工具が標準で、十分な切りくず排出スペースを確保します。
形状: 約45°の高ヘリックス角とポジティブレーキ角を採用し、効率的なせん断と滑らかな切りくず排出を実現。「O」フルート(単刃)工具は、アクリルなどで優れた表面仕上げを得るのに最適です。
クーラント: 一般的には圧縮空気またはミストクーラントを使用。目的は切りくず排出と軽い冷却であり、フラッドクーラントはプラスチックの熱衝撃や膨潤を招くため避けるのが望ましいです。
初期パラメータを設定後、試験切削を行い、次の簡易診断ガイドを使用します。
部品が溶ける・糸引きする: 工具が切削ではなく擦っている状態です。
対策: 送り速度(IPM)を上げる、またはRPMを下げる。工具の切れ味を確認。
表面が粗い・曇る:
対策: RPMを上げ、送りを下げ、ステップオーバーを減らす。工具の振れを確認。
エッジ欠け・層剥離:
対策: より鋭利な工具を使用し、送りをやや増やしてクライムミリングを実施(通常加工では層を引き上げる可能性あり)。
これらの推定手法は試作や初期設定には有効ですが、複雑形状、厳しい公差、量産部品では、プロのCNC加工サービスの専門知識が不可欠です。特に医療機器や航空宇宙などの規制産業向けの重要部品では、豊富なプラスチックCNC加工経験を持つメーカーと連携することで、初期段階から最適なパラメータが設定され、部品品質・精度・コスト効率を最大化できます。