アルミニウム7075-T6は、高強度の航空宇宙グレードアルミ合金であり、最も一般的に使用される調質状態(テンパー)の一つです。T6は「溶体化熱処理+人工時効」を意味し、強度と硬さがピークに達することで、最大級の疲労強度と寸法安定性が求められる構造用途に最適です。
アルミニウム7075-T6は、優れた被削性と高い比強度(強度/重量比)により、航空宇宙、モータースポーツ、防衛、産業用治具やハウジングなどのCNC加工で広く使用されています。
元素 | 含有量範囲(wt.%) | 主な役割 |
|---|---|---|
アルミニウム(Al) | 残部 | 軽量な母材で耐食性を付与 |
亜鉛(Zn) | 5.1–6.1 | 析出硬化による主要強化元素 |
マグネシウム(Mg) | 2.1–2.9 | 強度と硬さを向上 |
銅(Cu) | 1.2–2.0 | 硬さと熱伝導性を向上 |
クロム(Cr) | 0.18–0.28 | 耐食性と構造健全性を向上 |
鉄(Fe) | ≤0.50 | 残留元素 |
ケイ素(Si) | ≤0.40 | 残留元素 |
マンガン(Mn) | ≤0.30 | 残留元素 |
チタン(Ti) | ≤0.20 | 結晶粒微細化元素 |
特性 | 代表値 | 試験規格/条件 |
|---|---|---|
密度 | 2.81 g/cm³ | ASTM B311 |
融点 | 477–635°C | ASTM E299 |
熱伝導率 | 130 W/m·K(25°C) | ASTM E1952 |
電気伝導率 | 33% IACS(20°C) | ASTM B193 |
線膨張係数 | 21.2 µm/m·°C | ASTM E228 |
比熱容量 | 960 J/kg·K | ASTM E1269 |
縦弾性係数 | 71.7 GPa | ASTM E111 |
特性 | 代表値 | 試験規格 |
|---|---|---|
引張強さ | 570 MPa | ASTM E8/E8M |
耐力(0.2%) | 505 MPa | ASTM E8/E8M |
伸び | ≥7% | ASTM E8/E8M |
硬さ | 175 HB | ASTM E10 |
疲労強度 | 160 MPa | ASTM E466 |
衝撃抵抗 | 高い | ASTM E23 |
卓越した強度と疲労強度:7075-T6は入手可能なアルミ合金の中でも最強クラスで、長期にわたり動的・繰返し荷重を受ける用途に適しています。疲労限度(約160 MPa)は、重量当たりで見れば多くの鋼材に匹敵/上回る水準です。
優れた被削性:T6調質は強度を最大化しつつ、良好な被削性を維持します。超硬工具を用いた高速加工に適合し、±0.005 mmのタイト公差と優れた表面品質を実現できます。
低密度・高性能:密度2.81 g/cm³、引張強さ570 MPaにより、比強度は200 kNm/kg超となり、軽量な航空宇宙グレード設計に最適です。
中程度の耐食性:自然耐食性は高くありませんが、アルマイト処理やアロダイン処理で耐食性を強化できます。
熱安定性:125~150°C程度の環境でも機械特性を維持し、摩擦や運転熱に曝される部品に適しています。
工具摩耗:硬さの影響で、工具選定や冷却が不適切だと早期摩耗が起こります。
加工硬化:工具のビビりや局所硬化を避けるため、安定した送り条件が必要です。
発熱:切削熱が公差に影響するため、十分な冷却が不可欠です。
項目 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
工具材質 | TiAlNコーティング超硬 | 高温・摩耗環境に強い |
形状 | 中程度のすくい角、シャープ刃 | 工具寿命と切りくず排出性の両立 |
切削速度 | 150–250 m/min | 熱変形と刃先損傷を抑制 |
送り | 0.08–0.20 mm/rev | 一定の切りくず負荷を維持 |
クーラント | 高圧フラッド(≥30 bar) | 熱管理と切りくず排出を強化 |
工程 | 速度(m/min) | 送り(mm/rev) | 切込み量(mm) | クーラント圧(bar) |
|---|---|---|---|---|
荒加工 | 150–200 | 0.15–0.20 | 2.0–4.0 | 30–50(フラッド) |
仕上げ加工 | 200–250 | 0.05–0.10 | 0.2–1.0 | 50–80(ミスト/フラッド) |
アルマイト(陽極酸化):タイプII硫酸アルマイトは5~25 µmの耐食層を形成します。タイプIII硬質アルマイトは最大50 µm程度の酸化皮膜を形成し、表面硬さ400~600 HVの耐摩耗性を付与します。
粉体塗装:膜厚60~120 µmが一般的で、耐UV性・耐摩耗性・耐薬品性を向上させます。代表的な焼付温度は150~200°Cです。
電解研磨:表面粗さをRa 1.2 µmから≤0.2 µmまで低減でき、外観および耐食性の改善に有効です。
不動態化処理(パッシベーション):塗装や粉体塗装前の前処理として、表面汚染物の除去や塗膜密着性の安定化に用いられる場合があります。
ブラッシング:Ra 0.8~1.6 µm程度の意匠仕上げを付与し、コーティングの下地処理としても有効です。
アロダイン処理:導電性を維持しながら耐食性を付与し、寸法影響が小さいため、航空宇宙の電装部品で重要です。
UVコーティング:5~15 µm程度の透明層を形成し、外観・耐擦傷性・防湿性を向上させます。
ラッカー塗装:10~30 µm程度の保護層を付与し、光沢/マット外観の調整と酸化・外観劣化の抑制に有効です。
航空宇宙:疲労荷重を受ける翼桁、構造ブラケット、隔壁、エンジンマウントなど。
防衛・タクティカル:高強度ブラケット、マウント、ドローンフレームなどの高剛性部品。
自動車:高性能レース部品(サスペンションアーム、ステアリングナックル、ドライブシャフトヨーク等)。
ロボティクス:軽量構造アーム、エンドエフェクタ、ペイロードブラケットなど、剛性と速度が求められる部品。
治具・固定具:荷重下での安定性が求められる高精度ジグ、ダイ、航空宇宙用モールドベースなど。