材料工学および製造工学の観点から見ると、SLA樹脂部品の長期安定性は、試作を超えた応用において極めて重要な要素です。結論から言えば、未処理の標準SLA樹脂は黄変しやすく、時間の経過とともに機械的性能が大きく低下する可能性があります。これはフォトポリマーの化学的特性に起因します。ただし、適切な材料選定・後処理・用途設計によって、この劣化を制御・緩和することが可能です。
SLA部品の劣化は主に2つの要因によって引き起こされます。
1. 紫外線(UV)照射と光酸化: 標準的な樹脂は、造形後も化学的に活性な光開始剤やオリゴマーを含んでいます。太陽光や室内照明からの紫外線はさらなる化学反応を促進し、ポリマーチェーンを分解します。その結果、脆化や黄褐色化が進みます。これは部品が「制御されない状態で追加硬化」していることを意味します。
2. 湿度と熱: 高温環境では、ポリマーマトリクスが弱まり、強度や靭性の低下を引き起こします。また湿度は一部の樹脂を可塑化し、水分を吸収して膨張させ、寸法安定性や機械特性に影響を与えることがあります。
性能低下の程度は樹脂の種類によって大きく異なります。
標準樹脂・「タフ」系樹脂: 最も脆化しやすいタイプです。数週間から数か月で、衝撃強度や伸び率が大幅に低下し、衝撃や繰り返し荷重下でひび割れや破損が起こりやすくなります。
高機能エンジニアリング樹脂: ABSライク、PPライク、高耐熱樹脂などは、安定剤と改良されたポリマー化学により劣化耐性が高く、長期間にわたって機能特性を維持します。ただし完全に免れるわけではありません。
長期的な性能を確保するためには、以下のような積極的なエンジニアリングアプローチが必要です。
環境に適した樹脂を選定:
屋外または紫外線に晒される用途には、「UV安定」または「耐候性」樹脂を指定します。これらはフリーラジカルを捕捉し、UV光を吸収してポリマーマトリクスを保護します。
機能部品には、ABSやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂の長期安定性を模倣したエンジニアリング樹脂を使用します。
適切な後処理を実施:
ポストキュア: ポストキュア工程は最終物性を得るためだけでなく、残留光開始剤を反応させて除去し、化学的に安定した状態にする役割もあります。
保護コーティング: 透明なUV耐性コーティングは有害な紫外線を遮断する効果があり、塗装層は物理的・光学的保護を兼ね備えています。
設計および用途面での考慮:
外観モデル・試作用途: 標準樹脂で問題ありませんが、保存する場合は暗所かつ温度・湿度が管理された環境に保管してください。
短期的な機能用途: 「タフ」または「デュラブル」タイプのエンジニアリング樹脂を選択し、完全なポストキュアを実施します。
長期的な実用用途: UV安定樹脂に保護コーティングを併用するか、あるいは初めから安定性の高い熱可塑性樹脂を用いた製造技術を選択します。
まとめると、SLAは試作において圧倒的な精細度とスピードを提供しますが、長期的な用途に使用する場合は、フォトポリマー樹脂特有の経年劣化を考慮した慎重なエンジニアリング設計が不可欠です。